イスラム国による邦人誘拐・殺害の影響について~日本国民がとるべき行動

雑談ログ

えー、今2015年2月1日(日)朝9時ちょっと前(日本時間)です。早朝からイスラム国による邦人誘拐の件で残念な結果になったと報じられています。

後藤さん殺害か ネットに動画投稿 NHKニュース

動画の信ぴょう性について確認中とのことです。おそらく結果が覆ることはないでしょうが…

これで邦人人質2名とも殺害されてしまいました。結果的にはテロリストの要求(当初は2億ドル、その後ヨルダンに収監中の死刑囚との人質交換)が通らなかったことになります。

今後日本が自国と自国民を守るためにどうすればいいのかと考えまして、あまりまとめてませんが思いついたことを列挙していきたいと思います。

自分がイスラム国側だったらということも考えてみる

基本的に日本がイスラム国と関わって(それがたとえ敵対関係でも友好関係であっても)我が国の得になるようなことはないだろう、という前提で考えてます。

1.テロリストとの交渉はしない

従来の日本国政府の姿勢と同様です。「日本はそもそも交渉に応じない」という理解がイスラム国側に広がるのが一番です。ただ今回の件を見る限り、イスラム国側は何としてでも日本を巻き込みたい、というような意図も見えないことはないです。

2億ドルの人道支援金支出を「欧米国家との連携・支援・間接戦争参加」(そうでないことはおそらくイスラム国も理解したうえで)とあえて解釈し、後藤健二さん殺害後のメッセージにも

後藤さんとみられる映像、メッセージの全訳:朝日新聞デジタル

安倍(首相)よ、勝ち目のない戦争に参加するという無謀な決断によって、このナイフは健二だけを殺害するのではなく、お前の国民はどこにいたとしても、殺されることになる。日本にとっての悪夢を始めよう。

日本は彼らにとって大変良いカモである、あるいは(イスラム国から見て)敵国の連携を崩すアキレス腱になりうると考えているのではないでしょうか。

今回の件で日本政府のミスとして、ヨルダンとイスラム国との交渉についてヨルダンに交渉へのプレッシャーをかけていることを堂々と見せてしまったことです。邦人の人命が関わっているので交渉当事国へプレッシャーをかけるのは当たり前の話なんですが、表面上あくまで静観ということにしてあくまで裏ルートで行わないとイスラム国側に動揺を見せることになってしまいます。というかもう見せてしまいました。その点についてはもうどうしようもありません。

2.邦人は絶対にイスラム国に拘束されない

このような状況を考えるとイスラム国側から見れば日本に対して「脈あり」と読んでいる、と考えるのが妥当でしょう。つまり今後も日本国民の拉致・拘束は発生しうる(少なくともイスラム国側はそのチャンスを狙っている)と考えるのが自然ではないでしょうか。

政府が海外、特に現紛争中の危険地帯への渡航自粛を呼びかけるのはもちろん、個々の国民もいつ、どこで拘束されるかわからないということ十分に認識おくべきです。イスラム国の構成員または協力者は我々日本人から見て「明らかにアラブ人の顔」をしているとは限らないことにも注意です。

地球上どこにいても、というのは大げさですが、9.11の例を振り返るまでもなく敵国の支配地域中枢で大規模なテロを起こすことも可能(少なくとも可能性ゼロではない)です。つまり彼らは敵国の支配地域においても全くの不自由というわけではありません。日本国外での、特に中央アジアやヨーロッパでの邦人誘拐などはイスラム国側から見れば「狙いやすい」ところなのではないでしょうか。

3.通常のルートでの生還は期待できないことを認識しておく

人質として拉致され、要求が出された時点で邦人は生きて帰ることができない、と考えるべきです。これは「正しいか正しくないか」「正義か悪か」という議論とはまったく別種のもので、現時点の日本国民の状況としてそうである、ということを理解しておく必要がある、ということです。

それゆえ「どこに行って何が起こっても完全に自己責任である」という状況が出来上がってしまいました。

一部ネットの論者が展開する自己責任論とも違います。彼らが言うのは「自己責任だから助けない、助けられなくてもしょうがない」という趣旨ですので。「政府として邦人救出に全力を尽くす」責任と「拘束されたことによる自分自身への結果」の責任って全然違うものだと思うんですが、なぜかそういうことを言う人が多いです。

繰り返しますがこれは「善悪」の問題ではなく現時点の状況としてそうなっている、ということですので、事実は事実として認識しておく必要があるのです。

4.テロリズムそのものを敵と考える

何故か国内では邦人救出の対応について政府批判を行ったり官邸前で集会を開き「健二を返して」「FREE KENJI」などと横断幕やプラカードを掲げたりする人がいます。まったくバカげています。湯川さんと後藤さんを拘束しているのはイスラム国を名乗るテロリストです。官邸ではありません。

また、「これを機に安倍は中東へ自衛隊の舞台を派遣し手段的自衛権の前例を作る気だ。何としても安倍を退陣させよ」と言っている人もいるようです。安心してください。日本政府は中東に、少なくとも戦闘を主たる目的として編制された部隊を送ることはありません。っていうかできません。送っても無駄だからです。

イスラム国の兵士は個々の技術としての戦闘訓練はなされていても、いわゆる戦闘部隊として戦略にのっとった組織的行動をそもそもするつもりがありません。それゆえ彼らの行動は予想が付きがたく、従来の軍組織や部隊編成による対応が極めて難しいのです。そんな簡単に制圧できる相手ならアメリカが数にものを言わせてとっくの昔に黙らせています。

そのような状況ですから自称左派または平和主義者のいう右傾化軍国化については心配することはないでしょう。どちらかというと事件の国内政治利用によって議論の本質を失うことの方が憂慮されると考えます。

ちなみにイスラム国は日本国内の世論分断をわざわざ狙ってはいないと思います。日本国民同士で足引っ張りあってるだけです。むろん結果オーライ的な側面はなくはないと思いますが。

5.邦人救出のルートと実力を持つ

話を戻しますが、今後も邦人誘拐の可能性がある以上、人質奪還のための「実力」は備えておくべきです。そんなものは昔から持っていて然るべきだったのですが、

アルジェリア人質事件 – Wikipedia

イラク日本人人質事件 – Wikipedia

我が国の「備えよ常に」は空念仏なのでしょうか。情報収集と実力展開の準備はことが起こってから行うことではありません。平素に行っているからこそ意味があるのです。それは自衛隊、あるいは他国で言う通常の軍隊が行う軍事行動とは全く別質のものです。漫画や映画に出てくる特殊部隊のような荒唐無稽な活躍かというとそれとも違います(奪還を行う場合は最終段階では実力部隊は必要なのですが)。

今回の件では邦人両名の拘束から数か月経ってのイスラム国側からの要求開始であり、その空白期間の長さから情報取集能力の無さ、非正規ルートでの交渉力の無さが露呈してしまいました。これは大きな課題だと思います。

6.ネットでの祭りのこととか

ISISクソコラグランプリとか瞬間最大風速的に話題になったじゃないですか。でソーシャルメディア中心に敵国刺激するなみたいな批判があり、一方で海外メディア反応記事で「暴力にユーモアで立ち向かう、米国政府でもできなかったことを日本のネット民は為した」と評価してみたり。

ハッキリしてるのは『この件についてまだISIS側のハッキリした反応は見られていない』ということ。全く無関心であるか、怒り心頭であるか。あるいはそれ以外の何らかの関心をみせるのか。

相手の出方や反応の分からないことについては一旦動きを止めて様子を見るべきでしょう。一つだけ言えるのはネットはネットだけでできているわけではない、現実の延長線上にある、ということです。

そんなこと言われなくても判ってるよ、と多くの人が思うでしょうがそうではないのです。「判ってるつもり」なのです。ちょっと話題になると(論理性よりも主に感情にしたがって)乗っかって祭ってみたくなるのが日本のネット民の非常に悪いところだと思います。

というわけで今後の日本とイスラム国との関係あるいは邦人の人命が関わっているということを念頭に置いたうえで、祭り的バカ騒ぎに脊髄反射的に参加することがいいことなのかどうか、いったん冷静になって考える心の余裕が必要なのではないでしょうか。

まとめ

すみません、まとめられません。後藤さん殺害で一つの節目を迎えた事件ですが、じゃあこれで終わりかというと全くそんなことはないというのは先に書いた通りです。

これは全くの印象というか感想でしかないんですがどうも「やるべきことを全くやれていない」のに「やらなくてもいい余計なことばかりやっている」のが日本国内なんじゃないかな、と。いやだから何をすれば解決するって明快な回答ももってないのですが。

少なくとも現状としてどうなのかってことだけでも、個々の国民が、多少の当事者感を持って認識しておく必要があるのではないかと思っているわけです。

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