SFドラマでよく見かける『転送装置』は実はものすごーく怖い機械でした

雑談ログ

学生の頃は深夜の『スタートレックTNG』にすっかりハマッてたゴロドクです、どうも。

スタートレックシリーズ以外のSF作品でもけっこう見かける『転送装置』。惑星の地表から宇宙船へ瞬時に人を移動させるというアレです。実現したら便利そうな機械ですが、よく考えると大変なことに…

転送装置の仕組みはこんな感じです

遠い未来の話。東京にいるあなたの目の前に転送装置の片方『人間スキャナ』があります。この装置をくぐると中を通過したあなたの人体構造を分子レベルまで瞬時に読み取るというものです。分子レベルまで読み取るのですから当然あなたの細胞の数や配置までもそっくりそのままデータとして記録します。もちろん脳細胞や神経細胞についても。そして『人間スキャナ』にはもう一つ重要な機能がついています。読み取りが終わった『原稿(東京のあなた)』を強力なレーザーで瞬時に焼きつくすという機能が!

一方、海を渡って遠く離れたホノルルに転送装置のもう片方『人間プリンタ』なるものがあります。これは『人間スキャナ』で記録したデータに基づいて -遠い未来なのでどういった方法でかはわかりませんがとにかく- 瞬時に人体構造を構築するものです。

あなたはこの『転送装置』の詳細には知らされていません。ただ瞬時に遠くへ移動できるとだけ聞かされているとします。

仕事に疲れたあなたはホノルルの海岸でのんびりするためにこの転送装置を利用することにしました。『人間スキャナ』に入ったあなたはその瞬間気がつくともうホノルルの『人間プリンタ』にいるのです。目の前には青い海が広がります。日差しは暑くても湿気が無いので心地よいです。さぁ早速ハナウマ湾に行ってスキューバでも楽しんできましょうか…

ホノルルのあなたは東京のあなたを寸分たがわず再現してます。容姿が瓜二つなだけではなく脳細胞の一つ一つまで完璧に再現されているからあなたと同じことを考え、あなたと同じ感情を抱きます。つまり東京のあなたの心はホノルルのあなたの肉体に移植されたと言っていいはずです。それなら東京のあなたはレーザーで消滅されてもいいですよねどのみちあなたはこの仕組みを知らないわけだし。?あれ、ダメですか?

おや大変、「あなた」が二人になってしまった

こんな場合を考えて見ましょう。

『人間スキャナ』の調子が悪く、レーザーの出力が弱すぎて東京のあなたの消滅に失敗してしまいました。東京のあなたの体表は全身ケロイドのただれた姿になってしまいましたが、どうやら命に別状はないようです。

さっきから東京にいるあなたは焼け焦げてすっかり変わり果てた姿ですが当然自分が本物のあなただと主張するし、ホノルルのあなたも少なくとも物理的には完全にちょっと前までの東京のあなたと同じなのだから自分こそ本物のあなただと主張しています。いったい本当のあなたはどちらなのでしょう?

さらにこんな場合はいかがでしょう。実は『人間プリンタ』は世界50ヶ所にあって、スキャナをくぐったあなたと同一の構造・思考を持った人が大量生産されていたのです。『人間スキャナ』が正常に作動して原稿たる東京のあなたが消滅した場合、50人のあなたのうち本物のあなたはいったい誰なのでしょうか?

心と体はひとつ…か?

というちょっとこわーい妄想遊びですが、これは「論理パラドクス(三浦 俊彦 著)」という書籍にも掲載(細部はアレンジしてますけど)されている哲学や論理学で時々テーマとされるお話です。実際のところ論理的にどちらが(あるいはどれが)本物のあなたか、とは決着のつけようがありません。

どう受け取るかは個人の考え方次第ですが、私なりの回答は『消滅失敗』なら東京のが(グズグズになって痛くて醜くても)自分だし『50人複製』なら私は消えていなくなった、です。つまり「自己」とは物理的・時間的に連続な肉体が主体であって心とはそれに包含されるもの、あるいは肉体を主体とした「自己」を構成する一部とでも言えばいいでしょうか。だからもし私が『転送装置』の仕組みを知ってしまったら絶対にこれを利用することはないと思います。だって正常に機能しても私は消えてなくなるわけですから。

信仰上の理由から心(魂)と肉体は別物で肉体は魂をおさめるかりそめの器、と考える人もいるでしょう。それはそれで正解だと思います。そういった方がどちら(あるいはどれ)が本物の自分と考えるかとても興味深いのでちょっとお話をお伺いしてみたいですね。

難しいテーマですけどたまにこんなことで思索にふけるのも楽しいです。もし宜しかったらあなたのご意見を聞かせてくださいね。

あー、書いてたらホノルルでダラダラしたくなってきた…

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