選挙は終わっても政治に終わりはない

雑談ログ

第46回衆議院選挙は16日に投開票が行われ、大方の下馬評どおり自民党の圧勝となりました。そんな選挙の振り返りと今後のことについてちょっと走り書きを残しておこうと思います。

ちょっとのつもりが長文になっちゃった。これでもかなり控えめに書いたんですけどね。

第46回衆議院選挙結果

一応選挙結果について数値的なところをまとめておきます。ソースは第46回衆議院選挙-NHKより。

 政党   総議席数   小選挙区   比例   議席保有率   選挙前議席数 
民主党 57 27 30 11.9 230
自由民主党 294 237 57 61.3 118
日本未来の党 9 2 7 1.9 61
公明党 31 9 22 6.5 21
日本維新の会 54 14 40 11.3 11
日本共産党 8 0 8 1.7 9
みんなの党 18 4 14 3.8 8
社民党 2 1 1 0.4 5
国民新党 1 1 0 0.2 3
新党大地 1 0 1 0.2 3
新党日本 0 0 0 1
新党改革 0 0 0 0
幸福実現党 0 0 0 0 0
諸派 0 0 0 0
無所属 5 5 1 9

ちなみに投票率は投票率は59%台前半で過去最低(日経新聞調べ)となる見通し。

自民・公明で衆議院全議席480のうち325議席を獲得して絶対安定多数(全議席の2/3、320議席以上)を獲得、参院で否決された法律案も衆院で再可決が可能な議席数です。予算の議決ももちろん衆院の優越であり実質ねじれ国会の解消となりました。

選挙前に政権党であった民主の議席数は激減、また民主を離れて他党から出馬した候補71名のうち実に70名が小選挙区で敗北(唯一の小選挙区当選は小沢一郎・民主→国民の生活が第一→日本未来の党)と選挙前政権にかなり明示的に国民がNOを突きつけた形です。

橋下維新は石原太陽と合流後、政策方針がブレにブレまくった(と、報道された)ためそんなに票を伸ばさないのではないかと思われてたものの蓋を開けてみればなんやかんやで54議席を獲得、民主の57議席についで第3党となりました。

第2党・第3党あわせて111議席の保有ですが民主と維新が会派連携を組むとも思えず、仮に連携したとしても数の上で圧倒的に不利であり連立与党に対してバランス役をうまく勤めおおせるかというとかなり疑問です。野党の委員会での発言が少しでも有益な審議に寄与できれば良いんですが…それもなかなか難しいというのが現実のようです。

これからどうなるのかなぁ

選挙の結果と今後の国会、ひいては日本の行方について私の思うところなどを。

総論

先に書いた通り自民・公明の連立与党で絶対安定多数でねじれ国会解消、国会運営自体は今までに比べて多少はスムーズになります。

ただ「数の上で自民の圧勝」と言えどこれは自民の勝ちではなく離党者を多数輩出し議席を大幅に減らした民主の負けと理解するのが自然です。つまり自公政権という選択を国民によって信任された「わけではない」ですね。

安倍総裁が選挙結果を受けてのインタビューで「自民に国民の信任戻っていない」「結果を出して信任を勝ち取る」といっている通り自民もその自覚はあるでしょう。

逆に野党としては政策各論で世論が与党に向いてないところを重点的にほじくり返して頂きたく思うわけで、特に橋下氏なども多分自分でわかってると思いますがそういったところをマスコミ向けにアピールしつつ、野党として選挙外での国民の意思反映の役割を果たして行くべきでしょうしそうあって欲しいと思います。あ、ちなみに私自身は特定政党支持派ではなく国会運営バランス重視派です基本的に。

有効投票のうちの自民支持も「全面的に公約を支持できる最善がないので次善を選択」という側面も多分にあるでしょうし、過去最低の投票率というのもその一面を物語っています。

正直「票を投じたい候補・政党がない」がゆえ投票しない、という行動心理はよくわかりますしそれが今回の選挙の結果ということでしょう。あとどの政党の公約も具体性に欠けていて実行力に疑問符が付いた(特に前回衆院選の民主党のマニフェストなし崩しを直前に目にしているが故)というのもその一因でもあるように思えます。

ただ結果は結果として、この「投票率」には無効票や白票も含まれますので票の獲得率を合計しても投票率と同じにはなりませんね。よって「信任したい候補・政党がない」ことをもっと明示的に示すには投票に行った上で白票を投じると言うのもひとつの手段です。まぁこの辺はあまりマスコミに取り上げられたりしないんですが、一応次回の選挙のために一国民の意思表示の手段として覚えておくと良いと思います。

余談ですが次回選挙と言えば北海道9区当選の自民・堀井学氏が当確直後のインタビューで「次回選挙に向けて今から準備を云々」といった趣旨のことを述べて「おいおい選挙の前にやることあるだろ」「それ落選のとき向けに用意しといたスピーチじゃね?」ってツッコミを入れたTVの前の人は少なくないと思いますが、237という小選挙区での自民議席の中にはこういう人も紛れてるということを「次回選挙に向けて」忘れないようにしておきましょう良識ある一国民として。

TPPのこととか

加盟交渉国に米国が入った時点で日本にTPP交渉参加の是非を議論する余地はもはやなかったのではないかと私自身は思っておりまして、本来ならば早期に交渉参加しイニシアチブを握らねばならなかったところ「例外なき関税撤廃」という文句のみが一人歩きして交渉参加=日本経済の敗北という印象になってしまいました。

じゃ米国がもろ手を挙げて「例外なき関税撤廃」を推しているかというとそういうわけでもなく例外確保(乳製品や砂糖など)などを主張してきた経緯もあったのですが原加盟国や他の交渉参加国の抵抗にあい米国にとってもかなり苦しい状況です。おそらくその主張も今後変わってくるでしょう。

米国が日本をTPPに引きずり込みたいのは各国の輸出の矛先を自国から日本に向けることで少しでも輸入量の緩和を図りたい、といった意図でしょう。日本としての対抗手段はほとんど残されていないような気もしますが、米国と同様に参加すれば輸入を受け入れざるを得ないもう1カ国を交渉の場に引きずり出すとか、加工貿易で原料輸入を再度送り返す(トントンならよしとする)ぐらいしか私の貧困な発想では思いつきません。が、利益見込みのない加工貿易に喜んで乗っかる民間企業なんてないだろうなぁ。

経済ブロックに参加せず孤立するにしても景気が上向かないまま内需にたよったり、産業保護のために国の原資(税収)を重点配分しようというのも税収低下で消費税増税、社会保障サービスの低下について議論されてる中、国民の理解を得るのは難しくまったく現実的ではありません。

いずれにしても、輸入品目とカブってる産業への影響はTPP交渉に参加しようがしまいが影響はゼロではないわけで、ことここに及んではもはやどの政党が政権党になろうと敗戦処理投手を誰にするかという意味合いが強くなってしまいました。TPP非参加国と別の経済ブロックを確立すると言うのもないでしょうしまったく困ったもんです。

まぁ経済交渉内外で、受け入れざるを得ない輸入とトレードオフできる何かを日本が持っていればいいのですが…バブル崩壊以降、安い労働単価を海外に求めて新しい技術獲得や品質向上より原価低減と売り上げ増に執心してきた産業界の構造にも、TPP交渉参加とイニシアチブ獲得の難しさを作った原因はあるんじゃないでしょうか。単に直近の政局ばかりの問題ではないですよね。

防衛・改憲議論のこととか

私の自衛隊に関する見解は過去に書いた通りですのでここでは割愛。読んでいただけるとわかると思いますが基本的に9条関係のことについては改憲すべし、と考えています。が…

最近の自民の改憲案についても選挙前にざっと目を通しまして(この辺に現憲法との比較あり、参考まで)その賛否については

  • 第九条1項~2項:「国権の発動としての戦争を放棄」が「自衛権の発動を妨げるものではない」と明文化されたことについては賛成。
  • 第九条の二1項~2項:文民統制の明言されているについては賛成(現憲法でもそうだけど)。
  • 第九条の二3項:「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。」『国際的に協調』の範囲(地理的にも具体的な行動としても)があいまいであるためこのまま賛成は出来ない。
  • 第九条の三:「国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない。」『国民と協力』の範囲が兵役を含む徴兵まで意味するのか、解釈議論にならぬよう法律ではなく憲法上で明文化すべき。よって賛成できない。
  • 第百条(現九十七条に対応):「この憲法の改正は、衆議院又は参議院の議員の発議により、両議院のそれぞれの総議員の過半数の賛成で国会が議決し、国民に提案してその承認を得なければならない。この承認には、法律の定めるところにより行われる国民の投票において有効投票の過半数の賛成を必要とする。」議員数の過半数(現在は2/3以上)、また国民投票も『有効投票』ベースでの過半数になっており憲法改正の手段としてはあまりに軽すぎる。反対。

ほかにも色々あるんですが防衛がらみの改憲議論で言うとこんなところが私の意見。そんなわけで自民主導の現在の改憲案が進むことには基本的に反対ですね。

自民の石破幹事長も選挙前のTV番組での議論で「自衛隊を軍にしたからって旧軍のようなものになるわけじゃない」「だれが好き好んで戦争なんかするんですか」といった趣旨の発言をしていましたが、それならばそういった点についても口頭の説明ではなく、国民の理解を得られるよう憲法案に明確に盛り込んでおくべきですね。解釈論の余地と法律整備での対応といった部分を残したままの憲法改正には賛同できかねます。

往々にしてこういった話題のマスメディアでの取り上げられ方は「改憲か否か」「自衛隊か国防軍か」といった二者択一で報じられる傾向があったり(原発反原発もそう)しますが、これはそもそもマスコミでバイアスかけるためにあえてこんな意見聴取の仕方をしたりしてるんですよもちろん。で、きちんと個別の事項について目を通しておかないとあとで「こんなはずじゃなかったのに…」と言う事にもなりかねませんので、今からでも遅くはないですからきちんと目を通しておきましょう。

税と社会保障のこととか

税収低下で社会保障のレベルが下がるならなんとか原資を見つけなければならない、その点については多くの人は異論はないはず。ただその手法として消費税率増加がベストな選択かと言えば…かなり怪しい。

日本は先進国の中でも比較的消費税率は低い(参考:世界各国の消費税の税率一覧)方ですから税率アップ自体が悪とまでは言いませんが、年収の差で不公平感が生じないよう品目別・元価別税率の導入は必要でしょうし、社会保障の充実なく税率だけアップといって納得する人はいないでしょう。

ときに現金のバラマキ(なつかしいね、ふるさと創世一億円とか)や安直な減税政策は批判の対象になることはあります。しかし憲法が「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(「健康な最低限度の生活」ではない)を認めている以上貧する人を救うような課税配分や現金充当(ナントカ手当て的なもの)、社会保障は必要なわけで。問題はバラマキの途中で中間チョップしてるゴニョニョとか、誰の利益に供するのかとか、必要な人に必要なだけ行き渡らないってところなんですよね。つまり現金使っても使っただけの経済的効果にも弱者救済にもなってないという。

一応自民は一時的に消費増税凍結っぽいことをいってますのでアレですが、国民のほうもこのまま行けばいずれは手をつけなければならない課題であることを理解し、税収原資がなんであるかの前に税金の使途について注目また意思を表明することが必要だと思います。

高校無償化もいろいろ議論を呼び朝鮮学校が対象になるかどうかとかそんなところに注目が行ったりしましたが、教育の本質が次世代の日本を作ることと密接に関わることと考えるならば学校制度そのものも教育の内容も見直さなければならないはずなのですが、なかなかそういった点が論ぜられることは少ないですね。

教育のことは一例ですがほかにも災害復興が財政を圧迫することもハッキリしていて、ハコモノ行政に戻れば万事解決かというとそうでもないし、私あたりは消費税あげるより期限付き復興特別税導入とかそんなんでもいいいかな、なんて思ったりしてるんですけどね。まぁ目的税は予算の取り合いしてる霞ヶ関には嫌われるんでしょうけど。

まとめ・ひるがえって再度選挙のこと

書き出すとキリがないんで私の思うところはこの辺で。選挙関連で最近見た面白い記事は

【案外少人数】『若い人が投票に行けば世の中変る』と言われるけど、本当に変るのか計算してみた【友達一人でおk】: 【National INtelligence agency of JApan(NINJA)】日本情報分析局

浮動票の行方で得票数も大きく変わるから選挙に参加してない層が動くと結果も変わるよね、という数値シミュレーション。言ってもシミュレーションですから必ずこうなるってわけじゃないですが考え方として面白いですし世の中動く可能性はまだまだあるということ。

実際衆院総選挙2度続けて政権交代も起こってるし、選挙終わったからといって政治が決まったわけでもなく、長くてもあと4年すればまた選挙なわけで。

その間今回の選挙の結果だけを受けて国民が国会の行方から目をそらして良いわけでもなくきちんと観察し続ければならないし思うところがあれば意思表示もしたほうが良い。そして次回の投票行動に活かさなければならないでしょう。

坂本龍一あたりが反原発を放言(?)して叩かれたり、まぁそんな世の中ではありますが批判のための批判を言ってもしょうがないしこうしてブログあたりで単なる叩きでない個人の意思表明が出来る(どれくらいの人数が読んでいるかは別として)時代ですから言うべきことは言い、少しでも個人の意見が世論に反映されるよう小市民は小市民なりに悪あがきしてみるのも悪くはないでしょう。

というわけでタイトルに戻りまして選挙は終わりましたが政治に終わりはありません。議席の数が決まっただけで日本の行方が決まったわけではなく世論次第でまだまだ流動的な要素を多分にはらんでます。即効性はなくとも数年後には何かが変わるよう、たとえ政治の専門家でなくとも個人ブロガーあたりが思うところを書くのが当たり前になると世の中もうちょっと面白くなると思うのですが、いかがなもんでしょうか。

んじゃまた。

【追記】NHKの選挙速報始まって開口1発目が「自民圧勝」だったのでその後どの曲の速報も見ることなくさっさと寝たごろどくさんでしたが

切れ味が抜群すぎた『テレビ東京 池上彰の総選挙TV』 – NAVER まとめ

なんか盛り上がってたみたいですね。池上神とも思わないしバラエティ的斬る快感みたいのが報道にあるべきとはまったく思わないけど、バイアスのない率直な意見や質問と言うのは他のマスメディアでももうちょっと取り上げて良いんじゃないかな、と思った次第。

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