ここ2,3日首相官邸のホームページリニューアルしたのが良いとか悪いとか高いとか安いとか、なんだかそんなことが話題になっているようです。
賛否両論あるようですが、私も思うところをちょっとだけ、恐る恐る書いておこうと思いまして。
4,500万円かかったそうです
首相官邸ホームページ、4500万円かけリニューアル
2012.4.2 21:10
首相官邸のホームページ(HP)が2日、リニューアルされた。「さまざまな政策情報をより分かりやすく発信する」(藤村修官房長官)ため、各省庁が個別に発信していた政策情報を一括検索できる機能や、子供向けサイトを新設した。岡田克也副総理が新聞・雑誌の購読中止にいそしむ中、HP更新に要した費用は約4500万円という。
元記事はコチラ。ついでですので官邸ページとwikiの解説ページも示しておきます。
まずは首相官邸とは何ぞやということなんですが。
国家・国益を守り、国民生活を向上させることが政治と行政の役割。その中枢となるのが内閣でありさらにそのコアとなるのが首相官邸・内閣官房スタッフです。
建造物としての官邸は国家の司令塔でもあり、国賓を向かえるときの迎賓としての役割も持ちます。日本という国の顔であり頭脳にあたるともいえる存在ともいえますね。
さて、政治・経済・マスコミの世界に身を置く人間でなければおそらく普段から官邸ページなどに目を通す人は極めて少ないでしょう。かくいう私もその一人です。国民の政治・行政への関心度は薄いのでしょうか。そうならばそれはなぜなのでしょうか。思い当たる理由はこんな感じです。
- 国民の個人が尊重される時代なので、積極的な政治への関心・行動は全体主義とみなされるので敬遠される?
- 個々人の視野は限られているので、生活に埋没すると大きな視点でのものごとの見方を失いやすくなる?
- 政治・行政が機能していないため国民からの信頼を失している?
うーん、どれも本当であって本当でないような。というか、複合的な理由でどれかひとつが原因とは決め難いです。おそらくこれらのことは相互に関係しているのでしょう。
現にこのニュースを見て官邸ページを訪れた人も多いはず。だとすれば必ずしも国民は政治や行政に無関心なだけではないようです。
官邸ページの果たすべき役割とは
では官邸が独自のウェブページを持つ価値とはどこにあるのでしょう。その一つはマスコミ経由の二次情報ではなく一次情報を国民が直接享受できるところにあるでしょう。このような情報伝達が中間で第三者のバイアスはかかりにくいです。正しく運用されれば情報伝達も迅速になります。
一方、使い方を間違えると発信される情報は政治・行政(というか行政職についている人間)の利権にかなうものばかりになり、一次情報からバイアスをかけられると世論誘導になりかねなません。端的に言えば「行政による国民だまし」です。それを個々の国民が直接チェックするのはかなり難しいことといえるでしょう。
そうならないように官邸ページから国民への直接情報の発信があり、それが一方的なものにならぬよう各マスメディアがチェック機能を果たせるようなそんな相互リンク(HTMLのリンクという意味ではない)があり、比較対象となる情報をそろえ吟味した上で国民が行政や政治に意見を持つあるいは持てる、というのがよいのですが。ちょっと分かりにくいですかね。
国民は官邸の一次情報と、それを基にしたマスコミの二次情報(あるいはそれに付随した論評)、両者を見比べることが出来る(ソースの二元化・多元化)。個々の国民の視点が広がり固定的なものでなくなる。それによって様々な意見が述べられ、議論されるのがよいのではないかな、ということです。
そう言った意味では双方向性は必ずしも官邸ページには必要ないかもしれません。
私の見る現状
で、私が官邸ページを見ての率直な感想。
現状では見ても何かをクリックしてリンクをさらに追おうという気にはなれません。どこにどんな情報があるのか分からないのです。
いやナビゲーションはあり、トピックもあります。しかし「それが自分の生活とどうかかわるのか、どれが私に必要な情報なのか」ということが見えてこないのです。
検索機能を充実した、といってもそもそも何を検索すればいいのか、特に無目的に官邸ページを閲覧した人にはわからないでしょう。
もちろん原因はページそのものではなく日頃政治に深く関心を持たない自分自身にもあるんですけどね。
コンテンツが空っぽなわけではないですから、きちんと目的を持って訪問する人とってはそれなりに情報提供は出来ているのではないかな、とは思います。でもそういう人って社会の中ではある特定のクラスタに属する人のような気もします。国民みんなではないですよね。
そういう意味では「我々の行っている行政活動は皆さんの生活や経済活動のこういうところにかかわっているのですよ」という、もう少し分かりやすいアナウンスであったりそのための表現手法があっても良いのではないのかな、とも思います。まぁ行政全般のことを官邸ページだけでまかなうのは当然無理ですけど。
高い安い議論
で、話は振り出しに戻って、今回のリニューアルに4,500万円かかったのが高いのか安いのか、という話。
官邸ページに訪れる人が「政治・行政にかなり高い関心をもって」「かつそれに批判的であるか賛同的であるかかなり両極端な層、あるいは学識者・マスコミ」という限られたクラスタで、かつその層を強く意識してつくられたページならば多くの国民への直接の情報発信という役割は果たせていなさそうな気もします。
作業人工で計算して高い、安い、作業効率云々、セキュリティが…という議論もあるようですが、税金を払う一国民の立場からすれば正直その辺はわりとどうでもいいことで、『4,500万円を税を投入しただけの価値があるページになったかどうか』単純にそれだけのことだと思います。
先に書いたような特定クラスタにしか利用されないようならば、リニューアルは失敗ですし4,500万円は「高い」と言わざるを得ないと私は思っています。
行政広報という性質上そのページで直接利潤を生み出すことはないですが、だからと言って必要ないものかというと全然そんなことはありません。必要です。今回は消費税増税法案の国会提出と重なったから、国民目線としては厳しくならざるを得ない、ということもあるんでしょうけども…単に総額だけで判断するのもちょっと違うような気もします。
またバラ撒き行政が良いとは私も全然思いませんが、しかしこのような民間への業務発注(あるいは役務、工事などでも同様)が発生することで市場へお金が流れるというのも一面では事実です。税金を投入するものだから安ければ安いほど良い、ということでも無さそうです。
国家規模のことは分かりませんが自治体や地方公共団体発注の工事なんかでは完全に請け負けしてしまうようなおかしな設計だけど、予算計上した以上誰かが請けざるを得ない、体力勝負で消えていく中小零細も少なからずいる、という話も聞こえたり聞こえなかったり…あるいは私自身が実際に体験したことなどは…いやあまりその辺は詳しくお話できないですけど。ゴメンナサイ。
この手の議論はどこまで行っても平行線なのかもしれないですが
- 投入した税が目的物相当の価値があるか(税金投入の妥当性)
- 投入した税が受注側コストと見合っているか(受発注の公正性)
- 利益を供されるのが特定の層に限られていないか(受益の公平性)
この辺が見えてこないとはっきりとした結論付けはなかなか難しいのかもしれません。
それこそこ発注内容の内訳はどんなもので、発注側としてはどう考えたのか、官邸ページで取り上げてトピックに(分かりやすく!)載せてくれればいいんですけどね。
まとめ
行政活動の価値を金額ではかると言うのはとても難しいことです。ゆえに税を投入する以上は予算の執行者は費用対効果を考え、かつ国民に理解されるだけの実益を生み出せるよう、その実行にはもっと慎重になるべきでしょう。「納得できる」というのはとても重要なことです。
私の中での結論付けは「おそらく4,500万円の価値のある成果物にはなっていないので失敗」ですが、だからといって払ってしまった4,500万円は今さら取り返しようがありません。
幸い(?)なことに官邸ページからはRSSフィードの発信もあるようなので、とりあえずフィードリーダーに登録することにしました。
ついでに官邸がらみのツイ垢なども。
投入した税の回収として何円分に相当するかはわからないですけどね。ただ何もしないよりは多分いい。私みたいな政治無関心人間の総が少しでも減ったらそれはそれで(元が取れるかどうかは別にして)価値のあることになるのではないかと思います。
皆さんはいかがお考えでしょうか。
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